ピンク色のタンポポ
緋紅蒲公英Taraxacum pseudoroseum)

 正真正銘タンポポ属(Taraxacum)のピンク色のタンポポです。原産地は中央アジアですが、ある方法で入手しました。「日本たんぽぽラボ」と銘打っておきながら、舶来物です。もちろん国内には自生していません。

 Flora of Chinaによると花弁は赤紫色(amaranth)で、新疆ウイグル自治区、カザフスタン、キルギスタンなどの2400-3300mの高山、準高山地帯の草原地帯や森林の牧草地に分布しているそうです。

 ちなみにピンクのタンポポとしてよく知られているモモイロタンポポ」Crepis rubra)は、タンポポと名前はついているもののフタマタタンポポ(Crepis)属です。
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 総苞は外片が長く倒披針形で、水平位置まで開いています。外片に角状突起は無く、外来種タンポポや在来種との雑種に似ています。
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 開花した当日はシロバナタンポポかと思うほど色がついていませんが(左写真)、花弁の裏側と先端部は赤紫色でした。そして日光に当たることで色が濃くなってきました(右写真)。遠目にはバラの花のようにも見え、学名の「roseum」はこれに由来するのかも知れません。

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 花粉の大きさは見事なまでにバラバラで、倍数体と思われます。Flora of Chinaなどの文献には染色体数は書いてありませんので、何倍体かは不明です。(右写真)
★後日、この株の種から発芽した根の染色体数を自分で調べたところ24本でした。従ってこの株に関しては3倍体(2n=3x=24)と思われます(右顕微鏡画像)

 現在国内で広がっている外来種との雑種タンポポは外来種(セイヨウタンポポ)のこの不揃いの花粉のうち受精能力のあるものが2倍体在来種のめしべに受粉して生まれたものだそうです。緋紅蒲公英と在来種の雑種が出来る可能性もありますので、注意が必要です。
 また、できた種が風で飛ばされて野性化しないようにしっかりと管理しないといけません。

緋紅タンポポに興味を持った方が、検索でこのページを見つけて、参照していただいているようです。ありがとうございます。上にも書いておりますが、このタンポポは日本固有の種類ではありません。入手して育てられる方は、野生化したり、日本在来種と交雑したりしないように十分な注意をお願いいたします。
 栽培業者がつけていた名札には「タラザカム・プシュドロセウム」と書いてあるのです。英国風に読むとそうなるのかもしれません。学名はラテン語なので、ラテン語の発音だと「タラクサクム・プセウドロセウム」となります。ちなみに我々の業界ではpseudoは「シュード」と発音しています。


 pseudoというのは「偽の」という意味がありますので、この学名は「偽のバラ色タンポポ」という意味になります。そこで本物のバラ色タンポポ(Traxacum roseum)があるのか?と調べてみたところ、ベルリンのダーレム植物園(BGBM)に標本が収蔵されていて、植物園のサイトで標本画像を見ることができました。イランのAsadabar付近のElbus山(標高2600-3000m付近)で1902年に採集されており、ピンク色(rose)の花との記載がされていますが、乾燥標本のため実際の色は不明です。

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