隠岐西ノ島国賀海岸で観察・撮影した
オキタンポポ(
Taraxacum platycurpum ssp.maruyamanum)の形態的な特徴をまとめてみました。
今回観察したのは、国賀海岸の牧草地だけでしたので、比較的背丈の低い小型のものでした。ネットや文献で紹介されているオキタンポポは草丈も高く、葉の数も多いようです。
頭花の直径は3cm前後で、この写真の花の
小花数は約70個程度です。
総苞は15mm、
外総苞片の長さは10mmくらい、幅1.5-2mm、線状披針形。
葉は倒披針形で、先端は鈍頭、中裂し裂片は6-8対で三角形。全体に肉厚で光沢があるように見えます。
花粉は均一な大きさで、これは有性生殖をする2倍体の特徴です。
和名 オキタンポポ.
頭花は直径3.5-4cm、小花は80-150(平均120)個. 総苞は花時15-20mm. 外総苞片は直立または僅かに開き、総苞の3/2以上、角状の突起があるかもしくは無い、長さ0-1.5 mm。 外総苞片は長卵形または線状針形、長さ10-11mm、幅4-4.5mm。 花柱と柱頭は黄色。
染色体数 2n = 16 (diploid). 2倍体
分布(国内) Shimane Pref. (Oki Islands). 島根県隠岐島
(日本植物分類学会FOJより引用)
学名につけられた「maruyamanum」はオキタンポポ発見者で島根の植物学者、丸山巖先生にちなんだもの。
|
オキタンポポは新潟大学の森田龍義教授による分類では、カントウタンポポの亜種と位置づけられて(1980,1983)、 Taraxacum platycurpum ssp. maruyamanum という学名が使われていましたが、最近の遺伝学的な研究などから、他の国内の2倍体種とは独立した種であると考えられてきており、学名も Taraxacum maruyamanumとするのが適切なようです。
森田教授自身も、「東アジアにおけるタンポポ属(Taraxacam)の倍数性種分化の分子系統学的解析」(KAKEN1997年度 研究成果報告書概要)で、で12酵素14遺伝子座の酵素多型を用いた分析から日本の2倍体タンポポの分子系統樹を作成し、オキタンポポがカンサイタンポポに次いで他の国内2倍体在来種と早期に分岐しているとしています。
芝池博幸氏らはオキタンポポの葉緑体DNA上のtrn T-F領域の特徴的な配列が国内のほかの2倍体タンポポと異なることを報告しています。
「Hybridization between European and Asian dandelions(Taraxacum sextion Ruderalia and section Mongolica) 2. Natural hybrids in Japan detected by chloroplast DNA marker」Journal of Plant Research 115,1121(2002)
また富山大学の岩坪美兼准教授は「日本におけるTaraxacum(キク科)の在来低地2倍体種の染色体研究」Cytologia、Vol72(2007)で、セイタカタンポポ、エゾタンポポ、トウカイタンポポ、カントウタンポポ、カンサイタンポポ、オキタンポポの染色体を比較した結果、オキタンポポと他の5種とは核型が違っていると発表しています。
愛知教育大の芹沢俊介氏は、分類学的な研究と染色体の特徴から、オキタンポポは独立した種であるとの見解を発表しています。
「オキタンポポは独立種である」植物地理・分類研究 巻:55 号:1 頁:29-32 (2007)
Topページへ